漢方薬って本当に効くの?なにか胡散臭いくない?という方もおられるかもしれません。
また、苦いし、効くまでに時間がかかると思う方もおられるかもしれません。
漢方薬は、古くから先人の経験によって効果が確かめられた薬であり、病態に応じて処方されたものは、普段飲む西洋薬よりも効果があったりします。
漢方薬は生薬(自然界にあるものでブレンドされている)であるため安全性も高く、お子様でも飲める処方があります。
もちろん漢方薬が苦手にしている病気があります。例えば、癌であったり、高血圧や糖尿病、リウマチなどは病態に応じた西洋薬を飲むほか、注射や手術などしないといけません。
ただ、漢方薬は西洋薬にない身体の調子を整える作用があります。心身の調子を整えることで、カラダを楽にしてあげることができます。
ここからは小児で症状や病態に応じた日常で使える漢方薬を中心に紹介したいと思います。
発熱(風邪症候群)のとき
葛根湯(カッコントウ)、麻黄湯(マオウトウ)
適応は感冒の初期で悪寒・発熱・頭痛を伴うときで、熱があるが比較的元気があって汗がまだ出ていない状態で水分がとれるときによく用いられます。
葛根湯と麻黄湯の使い分けは肩や首が凝るときは葛根湯で、全身痛を伴うときは麻黄湯を使うことが多いです。インフルエンザやRSウイルス感染症のときなどは麻黄湯の方が好まれて処方されます。
鼻水(アレルギー性鼻炎)のとき
小青竜湯(ショウセイリュウトウ)
水様性の鼻水でくしゃみや咳を認める場合には良く効きます。ただしかなり酸っぱい味がします。大人でもよく効きます。
咽頭痛(のどが痛い)とき
小柴胡湯加桔梗石膏(ショウサイコトウカキキョウセッコウ)
風邪症候群の回復期(全身倦怠感や食欲不振が強く現れた)とき
補中益気湯(ホチュウエッキトウ)、十全大補湯(ジュウゼンダイホトウ)
嘔吐・下痢のとき
五苓散(ゴレイサン)
良く効きます。味もそんなに悪くありません。嘔吐が激しいときは白湯に溶かして、小さじスプーン一杯ずつ、こまめに与えます。
大人の二日酔いのときにもよく効きます。
腹痛のとき
小建中湯(ショウケンチュウトウ)
小児の腹痛のファーストチョイスです。腹痛はしぶり腹(クーと差し込むような痛み)の時によく効きます。そのほか偏食や少食、疲れやすい、顔色が悪い、おねしょ(夜尿)にも使われます。
甘くて飲みやすいです。
ゲップ、胃食道逆流のとき
六君子湯(リックンシトウ)
心窩部のつかえ、ゲップ、胸やけなどの上腹部症状が強いときに用いられます。乳児で吐き戻しが多くて体重が増えない時などにも用いられます。
便秘のとき
大建中湯(ダイケンチュウトウ)
便秘の第一選択薬です。おなかが張って苦しく痛みを感じる場合や腹部膨満感が強く、便秘傾向の時に用いられます。
胃けいれん、しゃっくりのとき
芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)
胃けいれんのような急性で激しい平滑筋の収縮と伴う痛み(差し込むような痛み)に頓服薬として用います。
マラソンの時など足がツルの(こむら返り)を予防してくれます。
味は酸っぱくて飲みにくいです。
夜泣き、チック、神経過敏、寝ぼけのとき
抑肝散(ヨクカンサン)
通常、2週間で試してみることが多いです。改善があれば、大体1ヶ月~数ヶ月飲んでもらって良くなることを確認します。
母児同服:うまく服用できなかったり、効果が不十分の場合にはお母さんにも飲んでもらうことがあります。面白いですよね。
そのほか、甘麦大そう湯(カンバクダイソウトウ)は不安が強い場合や入眠障害、チックなどに、虚弱な傾向があれば抑肝散陳皮半夏(ヨクカンサンチンピハンゲ)などが用いられます。
いかがだったでしょうか?今回は、小児漢方薬の代表的な処方について解説しました。
こどもの場合には、処方量の問題(体重あたり0.1~0.3gで成人量を超えないが基本ですが)やお薬の飲ませ方のコツがあるので、必ずかかりつけの小児科さんで処方してもらってください。
またここに書いたことは大人でも使えますので実際に試してみたい方は、ドラッグストアの薬剤師さんや漢方を処方できるお医者さんに必ず相談してからにしてください。
薬によっては身体に合わなかったり、他の薬の飲み合わせでNGだったりすることがありますので注意が必要です。
参考文献:
1 日本小児東洋医学会 小児漢方治療の手引き 日本小児医事出版社
2 西村甲 臨床漢方小児科学 南山堂